危なくない日記

サブカルチャーと社会学の交差地点

最近観た映画の話ーーイギリスの下層社会

自分の映画の趣味は圧倒的に邦画に偏っていて,洋画はほとんど見ない(タランティーノは例外)。しかし,どんな風の吹き回しか二本の洋画を立て続けに観る機会があった。

 

ひとつめは,絶賛公開中の『わたしは,ダニエル・ブレイク』である。舞台は現代のイギリス。実直に生きるダニエル・ブレイク(主人公)は,心臓の病を患っており,その病が原因で労働ができない状態にある。そうした状態にある人々を救済するのが「福祉」の役割のひとつであるが,役所の煩雑な手続きと制度に阻まれ,ダニエルは給付金を受給することができず,「階段から転げ落ちるように(by 湯浅誠)」窮地に追い込まれていく。善良に生きる(そして生きたい)ダニエルの生を否定するかのように立ちはだかる制度(とそれを体現する役人)に対してとても腹が立つし,なによりやるせない気持ちになる。サッチャリズム以降の福祉の削減というイギリス社会の趨勢に対する問題提起となっており,極めて「社会派」の映画となっている。もちろん現代の日本の社会も多かれ少なかれ,この映画で描かれているような状態にあるということは忘れてはならないだろう。


制度を執行する側からすれば,主人公のダニエルは福祉を利用する国民Aに過ぎないかもしれない。しかしダニエルの生は,国民Aとして書類上で処理されるような事柄に尽きるものではなく,そこにはどの生とも異なる「ダニエル・ブレイク」の生がある。そうした「尽きなく生きる(by 見田宗介)」ことへの表明をダニエルが行うシーンが個人的にはとても熱い気持ちにさせられた。

 

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二本目は,1996年に制作された映画『トレインスポッティング』であり,こちらもイギリスが舞台となっている。登場人物のほとんどがジャンキーというなかなかにハードな映画で,ロンドンで暮らす若者たちの生活が,ポップな音楽とともに描かれる。「まっとうな生活」と「ヤク漬けの生活」を往復する主人公は最終的にどのような道を選ぶのか,といったことが映画の見どころとなっている。あまり長い映画ではないので,登場人物(主に五人の若者)のキャラクターがそれほど詳細に描かれていないことに対して,少し物足りなさを感じたが,それを差し引いてもイギリスのカルチャーの雰囲気の末端が味わえる良い映画だった。

 

なんと今月に続編である『T2 トレインスポッティング』が公開されるそうなので,とても楽しみである。彼らの「その後」はどのようになっているのだろうか。

 

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さて,これら2つの映画に共通するのは,「イギリスの(特に下層の)社会を描いている」という点である。どうやら自分はそうした映画が好みらしい。そこに気付かされた。そういえば『This is England』を観たいと前々から思っていたことも思い出されたし,『時計じかけのオレンジ』にドハマりしたことも思い出した。イギリスの社会史を勉強しつつ,これからもイギリスを舞台にした映画を観ていこうと心に決めた。

 

映画で学べるイギリスみたいな本ないかな。