危なくない日記

サブカルチャーと社会学の交差地点

ロックと「っぽさ」ーー四つ打ちと邦ロック

ここ一年はヒップホップばかり聴いていた。このままヒップホップシーンに浸り続けるのも悪くはないのだが,たまにはロックをということで今日はYoutubeでいろいろと聴き漁っていた。

 

高校の頃によく聴いていたBlurFranz Ferdinandを出発点に,いろいろと海外の(特にイギリスの)ロックに手を出していくなかで好きだなと思えるバンドに出会った。

 

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まだ20代前半という若さがほとばしるバンド,Rat Boyである。どうやら去年のサマソニで初来日を果たしたようで,まさに「今から来る!」感のあるバンドである。音楽性としては,ヒップホップやシューゲイザーなどいろいろな要素を取り込みつつ,ガーレジロックの土臭さも残すというまさに「ミクスチャー」なものである。ただ,90年代に流行ったミクスチャーバンド(例えばレッチリ,レイジ,リンプ)と異なる点が二つ。

 

まずはラップが(ロックバンドにしては)うまいということ。インタビューで好きなアーティストとして,Chance the RapperやKendrick Lamarを挙げているだけあって,今風のこなれたラップをしている。MVには頻繁にスケボーをしているシーンが映り込み,ヒップホップカルチャーへのコミットがうかがえる。

 

そして,先に挙げたいくつかのミクスチャーバンドとは違い,イギリスのバンドであるということ。ヒップホップを取り入れ,かなりアメリカ感が前面に出てきているのにも関わらず,やはりどこかイギリスっぽいのだ。この「っぽさ」はどこに由来するのだろうかと思い,何度もMVを見てみたがこれが難しい。おそらく歌い方(発音)やギターの音,加えてファッションが「っぽさ」を引き立てているような……というところで考えるのをやめた。

 

この「っぽさ」はどこから来るのか,という問いを頭の片隅に残したまま,つぎは日本のロックを聴き漁ってみた。すると日本のロックにもイギリスのバンドとはまた異なった「っぽさ」があるな,ということに気付いた。特に最近のバンドの音に耳を傾けるなかある特定の傾向性に気付いた。それは,四つ打ちのドラムである。

 

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一応,補足しておくと「四つ打ち」とは,ドッツターッツドッツターッツというリズムのことだ。※イメージが湧かない方は以下参照

★ドラムレッスン★4つ打ち!ウラ打ち!ダンスビート! - YouTube

 

これらのバンドのなかでは夜の本気ダンスが一番わかりやすいかもしれない。「本気ダンス」というフレーズの通り,四つ打ちのビートは何といっても踊れる(ノれる)のだ。 横というよりも縦に動きたくなるあたりがロックとの相性がいいのかもしれない。

 

この四つ打ちのドラムを聞くと「あぁ,日本の(特に最近の)バンドっぽいなぁ」と感じてしまう。ドラムのフレーズに「っぽさ」を成り立たせる要素があったのだ。もちろんそれだけではないだろうし,他の「っぽさ」の構成要素があれば知りたい。

 

念のためいっておくが四つ打ちのリズムの多用という現象は,最近のバンドだけに限ったことではない。彼・彼女らの一つから二つ上の世代の邦ロックバンドも四つ打ちの曲を作っている。以下,上述したような最近のバンドを「10年代のバンド」,彼・彼女らより一回り先輩のバンドを「00年代のバンド」と便宜的に表記させてもらう。

※「00年代のバンド」といったからといって今は活動していないとは限らない。あくまでもヒット曲の輩出や目立った活動が2000年代であったということを強調するためのあくまでも便宜的な表記である。

 

「00年代のバンド」といえばやはりその代表格はASIAN KUNG-FU GENERATIOINであろう。今でも頻繁にコピーされたり,カラオケで歌われたりするバンドだ。最近『ソルファ』の再録版が発売されたが,再録版を出してもじゅうぶんに売れる程度にはレジェンドだろう。そんなアジカンによる四つ打ちの名曲と言えば間違いなく「君という花」だ。

 

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謎のピエロの踊りがトラウマになった人も少なくないとかなんとか。あと個人的に,カラオケでこの曲を歌った際にライブVer.の「らっせーらっせー」の掛け声をやってくれるタイプの人とは仲良くなれるというジンクスがある。

Sound Scheduleによる同名の曲もあるのだが,こちらも好きだという人になかなか出会えないのが残念だ。Sound Schedule 【PV】 君という花 - YouTube

 

そんな00年代以降の邦ロック界の規準ともいえるアジカンと同程度には世間に認知されていたバンドといえばチャットモンチーだ。彼女らによるヒットソング「シャングリラ」は変拍子の四つ打ちというなかなか珍しいタイプの曲だ。

 

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アジカンチャットモンチーも四つ打ちでヒットソングを飛ばしているわけだが,「10年代のバンド」のように多用しているわけではない。少なくともアジカンチャットモンチーといえば四つ打ちというイメージはない。そんな彼・彼女らとは異なり,四つ打ちを多用していた「00年代のバンド」がいる。それがBase Ball Bearだ。

 

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90年代のレジェンド,Number Girlのサウンドや世界観を引き継ぎながらも,あくまでもポップに落とし込むことに成功した彼・彼女ら(特にギターボーカルの小出)のセンスは恐るべきものだと思う。そんなベボベの特徴といばナンバガよりも都会的な青春の香り,女の子が出てくるMV,そして四つ打ちのドラムだ。「00年代のバンド」のなかでここまで四つ打ちのドラムを多用したのは彼・彼女らくらいなのではないだろうか。

 

Base Ball Bear - ELECTRIC SUMMER - YouTube

Base Ball Bear - 祭りのあと - YouTube

Base Ball Bear - 17才 - YouTube

 

彼・彼女らの四つ打ちの曲を挙げようと思えばいくらでも可能だ。最近のベボベの曲はそうでもないのだが,00年代の頃は本当に多用している。

 

「10年代のバンド」たちはアジカンチャットモンチー,そしてベボベなどを聴きながら育ったのであろう。現在の四つ打ちブームとでも言えるような「10年代のバンド」による邦ロックシーンは何もないゼロの状態から突然出現したわけではなく,「00年代のバンド」たちによって耕された畑のなかで育ってきたものなのではないだろうか。

 

では「00年代のバンド」は「90年代のバンド」による影響のなかで四つ打ちを取り入れ始めたのだろうか。そのあたりはわからない。ただ,ギターの音や歌詞があれほどNumber Girlの影響を感じさせるBase Ball Bearであるが,ドラムのフレーズにはその影響がまったく感じられない。狂ったように叩きまくるイナザワアヒトナンバガ)と四つ打ちを多用する堀之内(ベボベ)ではまったくと言っていいほどドラムのタイプが異なる。では,Base Ball Bearを含む「00年代のバンド」はどこから四つ打ちという技法を手に入れたのだろうか。「90年代のバンド」にそのルーツが求められるのだろうか。この問いは今後の課題とさせていただく。